アイルランド派のアイオナ派か、それともローマ派か。ノーサンブリア王のもと、ウィトビアで今まさに歴史的な教会会議(シノド)が開かれようとしていた。だが、会議を目前に、アイオナ派の有力な修道院長が殺害された。犯人は、対立するローマ派の人物か?国王の命で調査にあたるのは、アイオナ派を支持する若き美貌の修道女”キルデアのフィデルマ”。公平を期すようにと、ローマ派からも選ばれたサクソン人の修道士と共に、事件を調べ始めるのだが・・・。
キルデアのフィデルマ ・・・・・・・・・・・・・・・ 修道女。七世紀アイルランドの法廷弁護人(ドーリィー)
サックスムンド・ハムのエイダルフ ・・・ カンタベリー大司教に随行する修道士
ヒルダ修道院長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ストロンシャル(ウィトビア)の修道院長
コルマーン司教 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ノーサンブリアの司教。リンデスファーンの修道院長
エイターン修道院長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ アイスランドのキルデアの修道院長。アイオナ派の主席弁論者
ウィルフリッド修道院長 ・・・・・・・・・・・・・ リポンの修道院長。ローマ派の主席弁論者
オズウィー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ノーサンブリア王国の王
アルフリス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ オズウィーの長子。デアラ小国の小王
(書籍より引用)
シリーズ第1作目ですが、日本では6番目に発表されています。
これについて解説の説明によりますと、フィデルマシリーズの魅力は古代アイルランドとは切り離せないのですが、本書は舞台がブリテンで、かつ宗教問題や民族問題が絡んでいて、シリーズのとりかかりとしては魅力が半減するのでは?と懸念したため、発表の順番を変更した、とのことでした。
確かにフィデルマシリーズは、用語が聞き慣れないため覚えるのも大変ですし、訳註を同時に見ながらでないとなかなか読み進めないです。ですが、5作を読んだ後ならば、ある程度の用語も覚えていますし、習慣や法律や宗教観もなんとなく理解していて、入り込みやすくはなっているかと思います。
ただし、この第1作はローマ派とアイルランド派の宗教問題と、サクソン人やピクト人など人種問題も絡んでいて、なかなか時代背景や歴史背景を理解していないと、難しいと思われます。
ノーサンブリアは、スコットランドとの境界にあるイングランド最北東側の地域で、今のノーサンバーランドに当たります。ゲルマン民族の大移動で、ブリテン島にサクソン人・アングル人・ジュート人等が渡ってきて、先住のブリトン人と争いながら、ケント王国やマーシア王国など諸王国を形成していきます。
物語の舞台は、アングル人のノーサンブリア王国が勢力を持っていた時代、ただしブリトン人やピクト人、アングロ・サクソン系諸王国と交戦の続く時代になります。
またブリテン島でもキリスト教が広まっていきますが、ケルト(アイルランド)・カトリックとローマ・カトリックの間で、教義解釈や儀式などの面で様々な相違が問題となっていました。
そこで、664年、オズウィー王は国内外から多くの聖職者や学者を招いて教会会議(シノド)を開催します。事件はこの会議の最中に起こります。
物語は、フィデルマとエイダルフの捜査に重点が置かれています。
最初、相棒に反発していたフィデルマも、徐々にラヴが芽生えていきます。
エイダルフはフィデルマシリーズにおいて、ワトソン的な役割に例えられますが、少年探偵マンガのヒロインの立場に近いような感じがします。
今作では、私は犯人がまったく分かりませんでした。ただ、フィデルマも状況証拠だけで最後は賭けににでた部分もあるので、周到な犯人だと言えるでしょう。
また、会議に出席しているのは高名な宗教家たちのはずですが、けなしあったり殴りあったり、とても敬虔とか崇高とかのイメージはありません。会議の結果が政治的問題と密接に結びついているのも、世俗的な感じがします。
作者のトレメインは、フィデルマについてもそうですが、宗教家たちになかなか厳しい目を持っています。人間らしいといえるのかも知れませんが、シニカルな目線で表現しているように思われます。